基礎知識2020.10.24

高血圧の合併症~敵を知ることから始めよう

 高血圧は、健康寿命を短くする1番の危険因子であることは知っていますね?脳梗塞や心筋梗塞、腎不全などの病気は確かに怖いのですが、これらをおびき寄せるエサとしての高血圧こそ真の厄介者です。とはいえ、この厄介者とうまく付き合うことによって、恐ろしい病魔から身を守れることも事実。今回は、高血圧の陰から忍び寄る、合併症の数々を紹介します。ボス敵を知ることから始めましょう!

高血圧には自覚症状がほとんどない

 初期の高血圧には、自覚症状がほとんどありません。そのため、高血圧であることに気付かずに、動脈硬化が進行してしまうケースも少なくないのです。

 また、運良く健康診断などで高血圧が分かったとしても、その時に困るような症状が出ていなければ、食事制限をしたり運動をしたりといった生活改善を始める必要性を自覚するのも、なかなか困難でしょう。そのため、高血圧と診断されても治療を受けずに放置してまう方もいます。私たちの調査では、高血圧を指摘されてから、初めて医療機関に相談するまで、3年以上かかっていることが多いようです。

ここがポイント!
★初期の高血圧は自覚症状が現れにくく、高血圧であることや改善の必要性に気付きづらい
★知らない間に進行し、命に関わる合併症を引き起こすこともしばしば
★そのため、別名「サイレント・キラー(沈黙の殺人者)」とも呼ばれている


高血圧は別名「サイレント・キラー」と呼ばれる

 高血圧は、別名「サイレント・キラー(Silent Killer)」とも呼ばれます。これは、高血圧の自覚症状がほとんど無いまま、気付かぬうちに病状が進行し、ある日突然、命に関わる合併症を引き起こすことから名付けられました。高血圧の合併症は、脳や心臓などの重要な臓器に影響する場合が多く、あっという間に命を落としてしまうケースもあるのです。


高血圧者の約75%は治療を受けていないかも

 日本には高血圧の人が約4300万人もいると言われています。しかし、厚生労働省の調査によると、高血圧で治療を受けている人は、たったの1000万人程度です。つまり、高血圧になっている人の4人に3人もの人が、高血圧に対する治療をしていないのです。治療を行っていない理由は、多忙や経済的な問題など、さまざまであると考えられますが、治療につながらない原因の1つには「症状が現れにくく、病気であることの意識を持ちにくい」という高血圧の特徴もあると考えられます。

高血圧は怖い合併症を連れてくる

 高血圧は、動脈硬化を進行させます。血管は、全身に張り巡らされているため、心臓、脳、腎臓などに障害を及ぼし、様々な合併症を引き起こします。ここでは、高血圧の主な合併症について解説していきます。

ここがポイント!
★高血圧は無症状だが、呼吸困難、麻痺、認知症など、生活の質を低下させ、健康寿命を短縮せしめる合併症を引き起こす原因となる
★心臓や血管に現れる高血圧の合併症は、「狭心症」「心筋梗塞」「大動脈瘤」など
★脳に現れる高血圧の合併症は、「脳梗塞」「脳出血」「くも膜下出血」など
★高血圧により慢性腎臓病を発症する場合があり、進行すると透析治療が必要になる
★最近の研究では、収縮期血圧120 mmHgの人と比べて、160 mmHgの人は認知症を発症する率が10倍以上高かったとのこと


合併症の原因は、主に動脈硬化

 血管は全身に張り巡らされています。血液は、心臓から血管を通じて体の隅々まで酸素や栄養を送り、脳などの臓器が十分に機能できるよう支えています。しかしその血管で動脈硬化が起こると、先ほど説明したような仕組みにより血流が滞ってしまいます。血流が滞ると、その先にある臓器に十分な酸素や栄養が行き届かなくなってしまいます。



 高血圧により、心臓の血管で動脈硬化が進むと「狭心症(狭心症)」や「心筋梗塞(しんきんこうそく)」「大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)」などの「心血管病」になりやすくなります。脳の血管で動脈硬化が進むと「脳梗塞(のうこうそく)」や「くも膜下出血」などの「脳卒中」になりやすくなります。

 これらの心血管病や脳卒中は、高血圧が原因となって進行する場合が多く、代表的な「高血圧の合併症」です。


血圧が高いほど、死亡リスクが高まる

 厚生労働省が、「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」のために行った調査では、「収縮期血圧が10 mmHg上昇すると、狭心症や心筋梗塞などの心血管病の発症・死亡リスクが約1.1〜1.4倍上昇する」と示されています。

 また、高血圧で脳卒中のリスクが高くなるというデータもあります。大阪市立大学の研究グループによる報告では、収縮期血圧が160 mmHg以上の人はそうでない人に比べて脳梗塞の発症リスクが約3.5倍、脳出血の発症リスクが6.1倍高くなっていました。この結果は、日本脳卒中学会による「脳卒中治療ガイドライン2015」でも引用されています。

 このように、高血圧の合併症としての心血管病や脳卒中は、国民の健康に大きく影響しているということが、厚生労働省によるデータからも示されているというわけです。

心臓に起こる合併症とそのサイン

狭心症

 「狭心症」は、動脈硬化によって心臓の血流が減少し、心臓に十分な酸素や栄養を送ることが出来ない状態です。この状態を「心筋虚血(きょけつ)」と言います。いわば、心臓の細胞が「窒息」しかけた状態です。

心筋梗塞

 「心筋梗塞」は、狭心症と同じく動脈硬化が原因ですが、血管内に出来た「血栓(けっせん)」という塊が血管を塞いでしまい、心臓の一部分で血流が完全に途絶えた状態です。血流が途絶えた先にある心臓の細胞は死んでしまいます。これを「壊死(えし)」と言います。

 狭心症で「窒息」しかけている心臓の細胞は、また血管が十分に広くなれば回復しますが、心筋梗塞で「窒息死」してしまった心臓の細胞は、二度と生き返りません。そういう意味で、狭心症よりも心筋梗塞の方がはるかに重篤です。最近では、心筋を再生する医療の研究もおこなわれておりますが、なにより発症を予防することが肝要です。


狭心症や心筋梗塞を疑うサイン

 狭心症や心筋梗塞を起こすと、心臓は血液を全身に送るポンプとしての機能を果たせなくなってしまいます。全身が酸欠状態になってしまったら、それは死の危険を意味します。ですので、心筋梗塞の際には、非常に強い症状が現れます。

 主に体に現れる症状は、「胸痛」「動悸(どうき)」「吐き気」「冷や汗」などです。ただし、軽い症状の場合には「心筋梗塞」ではない場合が多いです。心筋梗塞の場合、命の危険を感じるような、今まで経験したことのない症状が生じます。その際は、周囲に知らせるとともに、救急要請を行いましょう。なお、「狭心症」でなくても、胸が締め付けられるような軽い症状が短時間生じることがあります。この場合も、治まれば救急を受診する必要はありません。怖いのは、「不安定狭心症」です。最初は軽い症状に始まり、その痛みや苦しみの程度は徐々に長く続くようになり、頻繁に起こるようになります。特に、朝方に症状を感じることが多いようです。このように段階的に症状がひどくなる場合には、「心筋梗塞」が近づいているサインかもしれません。早めに循環器内科を受診して相談するようにしましょう。


脳に起こる合併症とそのサイン

 脳の血管に異常が起こり、重篤な問題を生じる疾患の総称を「脳卒中」と呼びます。脳卒中は主に、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の3種類に分けられます。いずれの場合にも、初期対応が大切です。症状が強い場合には躊躇なく、直ちに救急車を呼ぶことが、その後の後遺症を軽減するため非常に重要です。

脳梗塞

 近年、日本で最も多い脳卒中であり、脳卒中の約60%が脳梗塞です。急性期の症状としては、「体の片方の麻痺、しびれ」「ろれつが回らない、言葉が出ない」「歩けない」「ものがおかしく見える」というような症状が現れます。また、脳梗塞の前兆として、一過性脳虚血発作(TIA)があります。脳梗塞と同じような症状が起きるのですが、その後、何の後遺症もなく短時間で回復してしまいます。しかし、TIAを繰り返すうちに約半数の人が、脳梗塞を起こすことが知られています。狭心症の際にも説明しましたが、「あれれ?」ということが繰り返し起こる場合には脳神経内科の受診を考えましょう。

脳内出血

 2番目に多い脳卒中が脳内出血で、全体の約3割を占めます。通常は、突然に強い頭痛を自覚することが多いです。しかし、高齢者では脳内の圧力が上がらず、頭痛が少ないこともありようです。上に述べた脳梗塞と同様の症状とともに、病状は進行性で意識障害を起こすこともあります。いびきをするような呼吸をし、呼びかけに反応しないような際には重症です。すぐに救急車を呼びましょう。

くも膜下出血

 くも膜下腔という脳の表面で出血することが原因です。スポーツやケンカなどで頭を強くぶつけるような場合にも生じますが、高血圧と関連したくも膜下出血は動脈瘤の破裂によるものが多いです。ほとんどは先天性に動脈瘤を持っていることが原因であり、高血圧がきっかけで破裂します。良く起きる年齢は40~65歳の働き盛り年齢であり、この年齢の高血圧が油断できない理由もここにあります。脳ドックで行われるMRIにより無症状で動脈瘤が見つかった場合、特殊な手術を行うことによって、出血を未然に防ぐこともできます。


脳卒中を疑うサイン

 これらの脳卒中を発症すると、「激しい頭痛」「めまい」「嘔吐」「手足などのしびれ」などの症状が現れます。脳卒中は、命に関わる危険な状態です。症状が軽い場合には、脳卒中ではなく、肩こりによる頭痛、耳鼻科疾患によるめまい、頚椎症によるしびれなども考えられます。軽症の場合には様子を見ても良いでしょう。例えばクモ膜下出血による頭痛は「バットで殴られたかのような突然の強い頭痛」と表現されますし、脳卒中であるならば、本人も、そばにいる人も、命の危険を感じることができるはずです。このような場合には、躊躇なく、直ちに救急車を呼び医療機関に一刻も早く到着できるようにすることが、命を守り、後遺症を少しでも減らすために極めて重要となります。


腎臓に起こる合併症とそのサイン

 高血圧の合併症の中で、「腎臓」に関係しているものに「慢性腎臓病(CKD)」があります。

 高血圧は、腎臓の血管に動脈硬化を起こすことなどでその機能を低下させ、慢性腎臓病(濾過機能の低下や蛋白尿)を引き起こします。腎臓は、血液をろ過して老廃物や塩分を尿として体外に排出する役割があり、塩分や水分を排出することで血圧を調整しています。そのため、慢性腎臓病を発症すると、高血圧も重症化するという悪循環を引き起こします。

透析治療が必要になる場合もある

 一度、一定以上の慢性腎臓病に悪化すると、その後もゆっくりと腎機能が悪化していきます。腎臓の機能は、一度失われると回復するのは難しく、腎不全になった場合には、血液がろ過できなくなり、体に老廃物が溜まってしまうため、人工的に機械を通して血液をろ過する「透析治療」が必要となってしまいます。透析治療を行わないと、尿毒症が進み命に関わるため、定期的に人工透析を受ける必要があります。

慢性腎臓病を疑うサイン

 初期の場合は、自覚症状がほとんどありません。そのため、高血圧と同じく気づかない間に進行している場合があります。病気がかなり進行してくると、夜間尿、むくみ、貧血、息切れなどの自覚症状が現れてきます。
 
 先ほども説明しましたが、腎機能は進行してしまうと回復することはないため、早期発見のためには、検診などで定期的に検査を受けることが重要です。血液検査では血清クレアチニンから求められる推算糸球体濾過率(eGFR)や尿蛋白の有無が重要です。検診ではこれらの項目が測定されない場合もあります。結果をよく見てみましょう。また、かかりつけ医と腎機能を守るために大切なことを話してみるのも良いでしょう。

大動脈瘤、大動脈解離とは?

喫煙+高血圧は大動脈瘤や解離の危険因子

 「大動脈瘤」は、動脈硬化によって血管の一部が膨らんだ状態をいいます。その膨らんだ部分が破裂すると、本来は臓器へ送られる血液が血管から漏れてしまいます。すると臓器へ必要な量の血液を送ることができなくなってしまい、出血によりショック状態に陥ることがあります大動脈瘤が破裂した場合には、すぐに手術を受けても、命を落とす可能性が高くなります。

 「大動脈解離」は、破裂はしないのですが、3層ある大動脈の壁が内側から破れ、壁と壁がはがれていく状態です。大動脈解離は、発生する場所によっては心筋梗塞の原因にもなります。見つけたら、救命のために手術を必要とする場合がほとんどです。

 なお、大動脈瘤も大動脈解離も、喫煙者に多いことが知られています。タバコは吸わない、禁煙することが何より大切です。もちろん、高血圧が重症化のきっかけになることはもちろんです。

大動脈瘤を疑うサイン

 大動脈瘤のほとんどは無症状のため、自分で発見することは困難であり、健康診断や診察の際に発見されることが多いです。大動脈瘤が大きくなってくると、声がかすれる、息苦しさ、血痰などの症状が現れる場合もあります。

 大動脈瘤の破裂や大動脈解離を生じた場合には、胸から背中にかけて、激しい痛みが急激に襲います。今まで経験したことのないような、生命の危機を感じる事態ですのですぐに救急車を呼ぶことになりますが、緊急手術を受けても死亡率は高いのが現状です。高血圧と診断されたら、大動脈に異常がないか、通常はレントゲン検査などで確認しています。血圧ケア・治療が適切に行われていれば、誰にでも起こることではありません。安心してください。

おわりに

 高血圧の合併症について命に係わる、生活の質を著しく低下させるような疾患を中心に解説しました。これらの合併症を予防するためには、あまり血圧が高くならないうちに、ベストは血圧が高くないうちから生活習慣に気を配ることが大切です。逆に言えば、高血圧とうまく付き合っていくことで、これらの合併症は確実に遠ざけることが可能です。お困りの際にはオンラインでの無料相談も実施しています。信頼できるメディアや医療機関の情報を参考にして、正しい高血圧ケア・治療を行っていきましょうね。


谷田部 淳一

この記事の監修

谷田部 淳一

医師・医学博士・高血圧専門医・内分泌代謝科専門医・指導医 一般社団法人テレメディーズ代表理事 高血圧診療のデジタル化を推進。ところが前のめりになりすぎて、マルシェで果物を売っていたりする。高血圧の総合商社になれたらいいなと思う今日この頃。

医師・医学博士・高血圧専門医・内分泌代謝科専門医・指導医 一般社団法人テレメディーズ代表理事 高血圧診療のデジタル化を推進。ところが前のめりになりすぎて、マルシェで果物を売っていたりする。高血圧の総合商社になれたらいいなと思う今日この頃。

アプリでかんたん 通院不要の高血圧ケア 詳しくはこちら